保育場面と実験場面における乳幼児の不安に関する研究
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概要
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集団保育の適齢期を知るための1つの資料として,保育場面における乳幼児の不安(研究I)と,実験場面における乳幼児の不安(研究II)について研究した。6か月ごとに年齢範囲を区切って,それぞれの年齢における不安反応の差を調べた。 研究Iでは,1975年から1978年までの4年間に,保育所に初めて入所した6か月から48か月までの乳幼児67名を対象に,保育場面における分離不安と,見知らぬ人への不安を観察した。 研究IIでは,1977年と1978年の7月に,6か月から54か月までの乳幼児67名を対象に,実験場面における見知らぬ人への不安と孤独の不安を観察した。 6〜12か月児の場合,保育場面においては,分離不安も,見知らぬ人への不安も共に,12か月以上の被験児よりも有意に弱かったが,実験場面においては,見知らぬ人への不安も,孤独の不安も,他の年齢群に比べて最も強かった。この年齢群は,母親との分離不安を示す段階には達していないために,母親と離れても,母親代わりの養育者が存在すれば不安を示さない。しかし,そのような成人が存在しない場合には,激しい混乱を示しやすい。したがって,乳児を集団保育に参加させる場合には,よほど行き届いた養育が可能な保育園でなければ,乳児に強い不安を引きおこさせる危険性があると考えられる。 全般的に,それぞれの不安が最も強く,また,情況の変化によって大きな動揺を示したのは,36か月未満の被験児たちであった。特に,18〜24か月児,24〜30か月児において,その傾向は著しかった。 30か月未満の被験児は,見知らぬ人への不安よりも孤独の不安をより強く示した。30か月以上になると逆の傾向がみられた。48か月以上の被験児は,見知らぬ人の出現にも,それほど動揺せず,実験室で活発に遊ぶものが多かった。 研究Iと研究IIの結果,集団保育を受けるのに適した年齢は,子どもの不安反応を指標とする場合,3歳以降が望ましいと考えられる。
- 1980-03-30
著者
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