児童の道徳判断についての研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
児童の道徳判断について発達を中心にして調べ,あわせて,母親の養育態度との関係を検討することを目的として,4才から8才までの児童250名とその母親について,面接質間および調査を行なった。児童の道徳判断を調べるために,児童の懲罰に対する考えかたを手がかりにした。すなわち,臨床法を用いて,Piagetによる2つの型の懲罰(「贖罪的懲罰」,「相互性による懲罰」)のうち,いずれか公正と考えられるものを選択させた。母親の養育態度については,Radkeによる57項目よりなる質問紙によって調査した。児童の道徳判断についてその結果は,年令が加わるにつれて,拘束や権威の規則に平行する「贖罪的懲罰」から,平等や協同の規則に平行する相互性による懲罰」へ変化し,その変化時期は5〜6才のころである。これは精神分析学における超自我形成期に一致している。しかし,Piagetの研究結果と比較すると,環境その他の要因によって,その時期は異なるようである。児童の道徳判断と母親の養育態度との関係については,「相互性による懲罰」を選ぶ児童の家庭は民主的であり,また,各懲罰選択はある点まで実際生活の経験に相応しているようである。ここに,児童期における家庭環境,とくに母親の養育態度が重要視されなければならず,家庭における母親の役割は,大きな意味をもつように思われる。
- 日本教育心理学会の論文
- 1968-06-30