マツヅアカシンムシとその天敵昆虫の生息数の年変動
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概要
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東京大学愛知演習林内に点在する若いクロマツ造林地において, マツヅアカシンムシとその天敵昆虫の生息数を調査した。生息密度の測定は毎年2月頃実施し, 1962〜1967年の間継統した。どの地点においてもマツヅアカシンムシの生息密度は1964年にピークに達し, その後減少した。寄主と天敵の両者の生息数の年変動をみると, 寄生であるマツヅアカシンムシの多い年には天敵も多く, またマツヅアカシンムシの少ない年には天敵も少なかった。天敵昆虫の大部分は寄生蜂であったが, それらのすべてについて寄生率が測定されなかったので, 2月の時点における寄生昆虫と寄主の生息比をもってそれぞれの天敵の働らきの度合いを比かくした。その結果, 天敵昆虫の中では, 単寄生で年1世代を経過し, マツヅアカシンムシを唯一の寄主とするLissonota evetriaeが生息密度も高く, また寄主の生息数の変化に対して最も強力に作用していることがわかった。これに反してPediobius sp.は, 多寄生で年に数世代を経過し, しかもマツヅアカシンムシ以外の多くの昆虫にも寄生し比かく的生息密度が高かったにもかかわらず, マツヅアカシンムシの生息数の変化に対応した働らきが全くみとめられなかった。
- 日本生態学会の論文
- 1969-08-01