鬼怒湿原泥炭層の花粉分析及びモミ属とトウヒ属の花粉の識別法
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概要
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栃木県鬼怒川上流の鬼怒湿原泥炭(高度2,000m)の花粉垂直分布図は, 12kmを隔てる尾瀬ケ原湿原でかつて中村(1951)が得たそれに似ているが, との鬼怒湿原の場合は基盤に接する最下層でBetulaが殆んど独占的(93%)である.これは晩氷期のAllerod期の気候温暖化に伴って最初にこの湿原付近に成立した森林がBetulaの林であったことをよく示すものと考えられる.シラどソ, ダケモミ, トウヒ, エゾマツ, キタゴヨウマツ, アカマツのなまの花粉について, この3属の花粉の識別法を吟味した.気嚢を含む全長, 細胞本体の長径と短径がそれぞれ95,75,60μを越えるものはAbiesとPiceaのいずれかで, それ以下のものはPinusである.AbiesとPiceaはこの3項では区別できないが, 腹面で測られる両気嚢間の距離がPiceaでは総て20μ以上のものの%(x)を算えれば, Abiesの%はx/75×100として概算できる。他方Abiesでは大抵は気嚢が円っこくてそのつけねの縊れが顕著である.Piceaは典型的のものは気嚢が平べったく縊れが顕著でない.しかしPiceaではこのような特徴が明瞭でないものが約30%にも達し, それがAbiesと誤認される憂がある.先ずAbiesの%を気嚢間の距離と気嚢の形態から推定して残りをPiceaとするのがよい.
- 1974-03-30