学歴と地域移動-県外流出に関する事例研究-
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概要
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以上、きわめて限られた資料にもとづいてではあるが、学歴が地域移動に及ばす影響について検討してきた。要約すれば、次のようになろう。(1) 一般的にいって、高等教育学歴を獲得した者は、出身地域から流出する傾向がみられる。もちろん、それは職業や地域の特性によってかなり差異がある。また東大、京大、その他の帝大、東京の私大、地元の工専等の学校がそれぞれ地域移動に対して演ずる役割には差異がある。(2) 地方の出身地域を離れて大都市で成功した人たちには、二つのタイプがある。一つは、有利な学歴なしに上昇移動して「名士」と呼ばれうる地位を獲得したものであり、他は、高等教育学歴を獲得したのち、主として官僚制的昇進によって高い地位に到達したものである。この調査では、前者は少なく、後者が優勢となっている。大都市に移動する独立自営型の人物は、土着のものにくらべて、土台づくりからはじめなければならないというハンディキャップがあり、それだけ冒険心、強い意志を必要とするが、その成功は偶然的なチャンスに左右されやすいのであろう。(3) 出身地域にとどまる「名士」たちのなかにも、有利な学歴所有者がいないわけではない。彼らは、大学教授、医師などとなって出身地域内に定着しているが、それとともに注目されるのは中央とのつながりという点で重要な意味をもつ県の要職などに地位を占めている者がいることである。しかし、それらの地位も、県内出身者よりはむしろ中央官庁から送り込まれる県外出身の有利な学歴所有者によって占められる傾向にある。
- 日本教育社会学会の論文
- 1969-10-10
著者
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