社会的価値志向に適合する開放型ネットワークの役割 : 個人による公的空間への情報発信支援について
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概要
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情報通信ネットワークが社会に浸透するに伴い、それが果たすべき役割も多様化している。その背景には情報技術の進展やそれに伴う適用領域の拡大と共に、社会的価値志向の変遷があることも考えなければならない。今日の主要な情報通信ネットワークとしてインターネットがあるが、これに代表される開放型ネットワークに課せられた新たな役割を、我々は個人による公的空間への情報発信支援にあると考え、その背景と状況について検討する。以降、本論では、まず現在の主たる社会的な価値が自己充実を志向しており、そこでは情報の関わりが大きいこと、およびその中でメディアは情報授受における表出的コミュニケーションの観点から自己充実を支援することを述べる。次に、情報領域の分析と個人が公的空間へ情報発信(公空間個発信)するための要件分析から、各種メディアのなかで開放型ネットワークが公空間個発信に最も適していることを示す。続いて開放型ネットワークの利用を、先進者利用段階(初期段階)、一般者利用段階(現段階)、さらに今後、進むであろう社会的効用段階(拡張段階)に分け、各段階での自己充実の支援状況を述べると共に、公空間個発信の拡大によってもたらされると想定される社会的効用についても言及する。最後に今後の課題として、発信情報と受信者の「注目(アテンション)」との結びつきに関する検討が必要であることを指摘する。
- 日本社会情報学会の論文
- 2000-09-30