情報ネットワーク社会と限定合理性下における意思決定
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概要
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これまで経済分析の意思決定において各経済主体の合理性が仮定されてきた。このことは、情報ネットワーク社会を分析する上では、不十分である。なぜならば、情報ネットワーク化により情報が豊富となりすぎ、各個人の意思決定は、限定合理性を仮定しなければならない状況となっているからである。組織の意思決定においても根本的な意思決定が、「プログラムできない意思決定」により行なわれている。そして、こうした意思決定が単純にプログラム化できないのは、不確実性が存在するからであり、その不確実性が時間依存的であるからである。さらに企業家は局所的な知識を持ち不確実性に対処しており、不確実性の下で長期期待を形成している。そして、企業家の長期期待は不確実性をあえて受け入れる行動を導き、この行動こそが経済発展の源泉である。そして、企業の設備投資の増大は信用供与により得られており、逆にこのことは、金融市場の不安定性や不均衡を生む原因となっている。こうした不安定性や不均衡は、資本主義経済システムが元来持つ性質である。これは限定合理性下の意思決定が影響しており、情報ネットワーク化によりさらに鮮明となっている。したがって、情報ネットワーク社会における意思決定の前提として、限定合理性、時間依存的な不確実性に対処し得る局所的知識、ネットワークの外部性を考慮しなければならない。
- 日本社会情報学会の論文
- 2000-03-31