メディアによって生まれる対面的な個別性の関係 : あるラジオ番組リスナーの「集い」について
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概要
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本稿は、「ファン・コミュニティ」の文化人類学的研究というテーマの下に、あるラジオ番組のリスナーたちの行っている「集い」を、フィールドワークによる調査研究に基づいて分析し、オーディエンス/ファン同士のコミュニケーションの重層性を明らかにするものである。リスナーが番組に「告知」を投書し、行う集会を「集い」と呼ぶ。実際に出会うことで友人関係を構築しようという試みである。そこでは、同じ番組に関する情報を持つ「比較可能で代替可能な者」同士の関係を、具体的な「個別性を持った顔のある誰か」同士の関係に変換していくという実践が見られる。これは、メディアを介して作られたファン・コミュニティにおけるコミュニケーションを情報交換のみの関係として語ってきた「おたく」論の一面性を批判するものである。また、オーディエンス研究において「受け手」の能動性を考える場合、受け手の行う「流用」がよく議論される。ここで明らかになるのは、その「流用」がメディア上だけで、すなわち顔の見えない「サイバースペース」だけでなされるのとは違って、「個別性を持った顔のある誰か」との繋がりにおいてなされることが重要であるということである。本稿は、そのような顔の見えない「サイバースペース」における繋がりを「個別性を持った顔のある誰か」との繋がりに変換し、コミュニケーションの重層性を創りだしていることに注目する重要性を明らかにする。それらの実践がメディアによる人びとの分断や抽象空間としての「国民文化」への回収に抵抗する「流用」であるということを示唆する。
- 2003-03-30
著者
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