新生殖技術時代の人類学 : 親族研究の転換と新たな展開(<特集>先端技術と/の人類学)
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概要
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本小論は、欧米の人類学界における新生殖技術(生殖補助医療)をめぐる諸問題への取り組みを概観することで親族研究の新たな可能性を探り、停滞の著しい日本の親族研究に若干の展望を示すことを目的とする。体外受精や胚移植、卵/精子の凍結保存などの先端的生殖技術=新生殖技術における急激な進歩によって、欧米や日本のような生殖医療先進国では、近年、親子や家族、夫婦、生命や身体など、人類社会に基本的な文化・社会概念の再構築が迫られている。欧米のフェミニスト人類学者たちは1980年代後半からこの種の問題に積極的に取り組み始め、1990年代初頭以降、新生殖技術やゲイ/***家族などをめぐる諸研究の成果を矢継ぎ早に出版している。その結果、欧米の人類学界では、近年、親族研究が「復活」あるいは「再燃」したとされている。にもかかわらず、日本の人類学界では親族研究の「終焉」が叫ばれるばかりで、新生殖技術をめぐる諸問題に取り組もうとする研究者はほとんどいない。以上のような認識に基づいて、本小論では、まず、欧米の人類学界における親族研究の「復活」を確認し、その「復活」が従前の親族研究の単なる「復活」ではなく、理論や方法、テーマ・トピックの「転換」であったことを明らかにする。そして、この種の「転換」を正当に評価するためには、フェミニスト人類学に端を発する新たな親族研究の系譜を想定しなければならないことを示す。その上で、親族研究に「転換」をもたらした主要な要因を検討し、その一つが新生殖技術の急激な進歩であったことを明らかにする。最後に、「新生殖技術時代」の親族研究が取り組みうる有力なテーマないしトピックを検討し、今後の展望を述べてみたい。
- 2002-03-30
著者
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