村落開発実践の民族誌 : 援助事業に関わるアクターとしての人類学者の視点から(<特集>内側から見た開発援助 : 開発実施者の視点をさぐる)
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概要
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開発パラダイムの変化に伴い, 人類学者が開発実践に直接関与する例が日本でもみられるようになった。開発実践に携わる人類学者は必然的に介入者としてフィールドで絶対的な権威的関係に置かれ, 開発事業の枠組みという制限のもとに, 「よりより開発」を模索する開発事業に加担する事となる。本稿では, 開発の主要なテーマの一つである住民参加を重視した村落開発事業を事例に取り上げ, 介入者-人類学者を含む-と住民そしてその他関係者から成る様々なアクターの存在に注目する。開発プロセスを, 自らを含むアクター間のインタラクションによって生み出されるものとしてとらえた考察を通して, このような人類学者の開発実践への取り組みが今後の開発実践の改善に対してなし得るであろう貢献について検討する。開発実践の民族誌記述は, 開発実務者が見失いがちな, 事業における介入者自身の存在と影響を指摘し, 「住民」と括られる人々の多様性と事業参加にかかわる彼らなりの戦略を描き出すと共に, 広くフィールドにおける調査者と被調査者との関係性に基づく包括的な記述のあり方を検討する有効な材料となるのではないかと考える。
- 1999-12-30