集落開発の仮定と実践をめぐる人類学的考察 : グアテマラにおける参加型集落開発の事例から(<特集>内側から見た開発援助 : 開発実施者の視点をさぐる)
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概要
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集落開発は, ある特定の地域, 特に農村地域集落とそこに住む住民に焦点をあてた開発の戦略として1950年代以降, 多くの開発途上国そして様々な援助機関等によって多用されてきた。また1980, 90年代には地域住民の参加を重視する参加型開発という開発戦略の広がりと共に, 再びその勢いを取り戻しているかに見える。集落開発はそもそも地域の住民の団結した努力と自発性, そして外部からの援助を組み合わせ地域の生活状況の改善を図ることを目指す。またプロジェクトのあらゆる過程に住民が参加することを通じて, 住民自体に問題解決能力および発展へ向かう態度を身につけさせようというものである。しかし, 一方でそれは団結した比較的同質的な人々からなる統合的全体という単純な集落像に基づいている事が多い。そして集落内に存在する様々な社会的差異などの多様な現実が考慮に入れられていないのである。実際には集落内においては様々に異なり時に対立する利害すらもつ社会グループの存在, ジェンダー, 経済的格差, 宗教, エスニシティなどの差異, そしてその間の力関係などの多様で複雑な集落の現実が存在するのである。そのような現実に目が向けられないまま外部の介入もしくはプロジェクトとしての何らかの便宜がはかられる時, その実践の過程においては集落内での対立を招いたり, 集落内の格差をさらに広げることになることがしばしばある。参加型といわれる手法にのっとった集落開発においてもこれらの多様性の現実に十分に応えるものではない。本稿においては, 筆者が実際に携わった実践の経験をもとに集落開発において立ち現れてくる以上のような問題点について人類学の視点から考察する。
- 日本文化人類学会の論文
- 1999-12-30