運動する妖術世界 : 中南部アフリカの妖術師捜し運動(<特集>呪術再考)
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概要
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中南部アフリカに豊富な事例のある妖術師捜し運動は, アフリカの妖術世界の動態を示すものとして注目されてきた現象である。本稿は, 植民地時代から現代に渡るこの種の現象の研究に参照し, 完結した機能主義的説明モデルによって捉えられがちな妖術現象を動態として捉えるために, 妖術世界と歴史とを問題化する視点を探るものである。マラウィを中心として繰り返し興隆している妖術師捜し運動は, これまで主に植民地化に対する妖術世界の反応として理解されてきた。しかし, 独立以降も同様な現象が観察され, 既存の説明モデルが適用できないことが認識されるにあたり, 西洋的歴史観とそれと不可分に結びついた妖術世界の機能主義的モデルとを乗り越えることが求められている。本稿は, 妖術世界から政治を分離し歴史を後者に帰属させるというパターンを持つ我々の分析的視点を問題視し, 妖術世界の動態を「力」による「意味」の決定という構図によって捉える視点を批判することに, 今後の研究の方向を見い出している。
- 日本文化人類学会の論文
- 1997-12-30