開発一元論と文化相対主義 : ネパールの近代化をめぐって(<特集>文化相対主義の困難を超えて)
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概要
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1949年にはじまった発展途上国の開発は, 今日世界の隅々に拡がり, 制度化して産業化した。その隆盛は, 20世紀後半を「ポスト植民地時代」と同時に「開発の時代」とも名づけうるほどである。一方で, 開発は当初期待したような成果を結ばないばかりか, 発展途上国内の強者に荷担し, 弱者をより窮地に立たせるなど, その行き詰まりや矛盾も露呈してきている。人道, 経済的共存, 政治的安定などを目的と掲げる開発は, 西欧近代の普遍主義を拡張する先鋭的な企てに他ならないという根元的な問題もある。本稿では, ネパールの近代化と開発の問題を歴史的な文脈のなかで取り上げ, 開発一元論を「方法」としての文化相対主義の視点から批判的に考察する。ともすれば, 人権, 自由, 平等, 民主主義, 地球環境といった概念のように, 人類の普遍的な価値として特別席に位置づけられがちな開発を, もう一度相対主義の地平にのせ, 西欧中心主義の拡大と物質的な「豊かさ」の普遍化という同時並行の二つの現象の峻別について議論する。
- 1997-09-30
著者
関連論文
- 前川啓治著, 『グローカリゼーションの人類学-国際文化・開発・移民』, 東京, 新曜社, 2004年, 206頁, 2,300円(+税)
- 開発一元論と文化相対主義 : ネパールの近代化をめぐって(文化相対主義の困難を超えて)
- リーディング・ガイド
- 魚毒漁の社会生態 : ネパールの丘陵地帯におけるマガールの事例から
- 理想の社会空間を求めて : 国家を超越するネパール人労働移民
- 鍛冶屋カーストの近代と銅製水入れの系統分類 : 西ネパールの事例から
- 住民の環境意識と景観にみる環境利用 : ネパールの事例
- ガネッシュ・マン・グルンさん
- 南アジアの舞台裏 : ネパールとパキスタンの動向
- ハーバード大学人類学部ピーボディー考古学・民族学博物館(Peabody Museum of Archaeology and Ethnology, Harvard University Museums of Cultural and Natural History)の展示替え
- 丸木舟収集記 : 川から見る陸の世界
- ネパールにおける「文化の垂直構造論」展望