表象と政治性 : アイヌをめぐる文化人類学的言説に関する素描
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概要
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社会的レヴェルでのアイヌをめぐる問題の浮上や, 学者がそれに対して責任を果たすべきであるという気運の高まりに比して, アイヌに関する「現在」的な問題に対する文化人類学による取り組みの蓄積は依然乏しいままである。本稿は文化人類学におけるアイヌ研究の今後の可能性を模索するため, 日本におけるこの分野の言説の政治性について歴史的に考察する。そこに看取される論理への批判的視点から帝国日本の黎明期以来のアイヌを対象化する学的言説を概観したときに浮かび上がってくるのは, それらの言説が「国民」創出の過程と相関を保ちつつ, 文化的に「同化」していくアイヌの差異を永続的に対象化するレトリックを精緻なものにしていったプロセスである。本稿では, それらの言説のなかでアイヌの「現在」が捨象されることによって具体的現実のレヴェルで展開する「政治」が隠蔽されてきたことを明らかにする。
- 日本文化人類学会の論文
- 1997-06-30
著者
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