二つの水, jal と pani : インド・ベンガル地方のポトゥア・ジャーティの生業と宗教
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
インドのカースト社会では, 改宗はしばしば個人又は集団に地位の上昇をもたらした。しかし, 改宗の全てが上昇モビリティのために行われた訳ではない。本稿は, 生業形態, 経済状態, 居住環境, 居住区の歴史など, 集団の持つ基本的要素によってジャーティ集団と宗教との関係が異なるという視点に立ち, ベンガル地方の2つのポトゥア集団の事例を分析する。これらのポトゥアは同一ジャーティで, 地域文化を共有し, 一方は絵師, 絵解き師であるイスラーム教徒, 他方は神像製作を主たる職業とするヒンドゥー教徒である。ムスリム・ポトゥアはヒンドゥー教徒と密接な関係を保ちつつもヒンドゥー教に改宗せず, 意図的にムスリムとヒンドゥーとの両義的な存在であり続けている。ヒンドゥー・ポトゥアの方はムスリムからヒンドゥー教への改宗後, ヒンドゥーとしての明白なアイデンティティを持っている。こうした違いをもたらした主な要因は彼らの生業形態にあるのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1992-09-30