王権とカースト : バラモン-王・支配カースト関係小考
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概要
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本論の目的は, バラモンを頂点におく浄・不浄のカーストイデオロギーと, 王権や支配をめぐる観念との関係についての考察をなすことにある。王や支配カーストと関わる事象は, これまで多く世俗的で非価値的なものとして扱われてきたが, それは, 吉・凶というヒンドゥーの宇宙論的価値観念と密接なつながりをもつものである。バラモンと王・支配カーストの関係また浄と吉の関係は「転換的ハイアラーキー」にあるものとして捉えられる。これは採用する視点に応じてどちらが包摂的な価値であるかが転換しうるとする概念である。バラモンの視点からみれば, 浄こそが全体的・包摂的な価値であり, 王・支配カーストが体現する吉は部分的な価値にすぎない。だが他方で, 王・支配カーストの視点からみれば, 吉こそが全体的な価値であり, 浄性はバラモンが司祭として吉の実現に奉仕するための条件的・被包摂的価値としてあることとなるのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1990-09-30