わが国宗教文化にみる「左(手)」の習俗の解釈について : 大分県における二つの事例を通して
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概要
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筆者は, さきに, 北部九州数ヵ所の農村調査を通して, その氏神祭祀と葬制に, ともに, 「左(手)」の習俗がみられることを明らかにし, 同じムラにおけるそのそれぞれが, 異なった意味ないし異なった原理での「左(手)」であるということをのべたことがあった(『民族学研究』51(4)所収の拙論)。ところが, その後の研究調査の結果, 「左(手)」の習俗は, そのようないわば「成立宗教」に対する「民俗宗教」に深くかかわっいることが明らかとなった。また, 氏神祭祀上と葬制上とにみられる「左(手)」の習俗も, 共通する意味合いにおいて統一的にとらえることも, 一面, 可能であり, 要するに, わが国の宗教文化において, 「左(手)」が「呪術・宗教的活動」にかかわり, 「右(手)」が「世俗的活動」にかかわるとするいわゆる「二元構造」も想定される。本論は, ニーダム(NEEDHAM, R.)がアフリカ・ケニアのメル(Meru)族およびウガンダのニョロ(Nyoro)族の宗教文化の「左(手)」を分析し解釈している「二元的構造論(dualism)」を援用しつつ, わが国の宗教文化にみられる「左(手)」の習俗の事実を解釈してみた一つの試みである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1990-06-30
著者
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