台湾ブヌン族における今日の社会状況
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概要
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かつて馬淵東一らによって深く研究された台湾のブヌン族社会が戦後40年を経た今日, どのような姿をしているかを検討した。対象村落はブヌン族を6区分する諸部族中のTake-vatan族の移住地村落であり, そこには父系血縁原理に特徴づけられた氏族システムと婚姻規制がなお顕著に機能する社会の実態が見い出された。しかし, 戦中∿戦後の社会変化を通じてそれは唯一絶対の社会システムとしての統合力を失い, その機能作用は部分化せざるを得ない。焼畑農耕から水稲農業・賃労働への移行にともない, 父系大世帯も解体にむかい, 小世帯居住と氏族集団の再編成といった変化もすでに現われてきており, 父系システムの内側での婚姻規制はなお強固に貫徹されながらも, システム外での変化への対処として超種族婚や通婚圏の拡大といった現象も生起し, そこには新たな社会のあり方への模索が認められるのである。
- 日本文化人類学会の論文
- 1990-06-30