イエとムラ : インドネシア・東スンバ社会におけるイデオロギーと現実
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概要
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インドネシア・東スンバの中核村ウンガを構成するイエの特色を明らかにすることが本稿の目的である。中核村はクニの社会的・祭祀的中心であり, その領域内に住むカビフ(イデオロギー上は父系クラン)の持つ慣習家屋が建てられている。分析上, 三つの位相のイエが区別される。第一の位相はイデオロギーとしてのイエで, 人々の語りの中に認められる。イエは父系出自のイデオロギーと対応し, 離接的な出自集団であり, また超歴史的な存在でその儀礼的機能は神話に基づく。第二の位相は操作モデルとしてのイエ集団で, 中核村ウンガに現存する13戸の慣習家屋について、祭祀の場としてその家屋を共有するイエ集団が言及される。成員の帰属に関して政治的・社会的観点から出自は共系的に辿られる。第三の位相はマラプ(始祖)祭祀のために現実に慣習家屋に集まる人々から成るアクション・グループとしてのイエ祭祀集団である。ウンガでは親族イデオロギーと実際の集団構成の間には大きな相違が認められるが, 逸脱はしばしば他の親族イディオムに言及することによって正当化される。
- 日本文化人類学会の論文
- 1989-09-30