「名付けること」と「娶ること」 : ケニア・アバクリアの「死者」をめぐる災因論の一側面
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
西ケニアのアバクリアでは, 「死者」による災いに対して, その災いをもたらしている外部の「死者」を家に迎え入れてその名前を子供に付ける。殺された者が崇っている場合には, 殺人者はその殺された者を「娶る」。このような「名付けること」と「娶ること」という行為の背後にある論理は, 言わば《死霊の祖先化》である。個別化された死者である《祖先》も子孫である生者に災いをもたらすが, 他の「外部の死者」(天の存在である《死霊》や殺された者の《崇る霊》)のもたらす苛酷な災いに比べればその災いは比較的軽微なものであり, 名付けによる《個別的祖先化》は死者との互酬的関係を安定させる。一般の固有名は双系の祖先の名前から付けられ, その子孫はその先祖と同一視される。外部の死者の名前を子供に付けることはその死者を祖先化することになるが, 「名付け」による外部の死者の祖先化(=取り込み)は, 自己の錯綜した多重化をも結果しよう。
- 日本文化人類学会の論文
- 1989-06-30
著者
関連論文
- 沖縄の「門中化」と知識の不均衡配分 : 沖縄本島北部・塩屋の事例考察
- 村武精一著, 『祭祀空間の構造-社会人類学ノート』, 東京大学出版会, 1984 年, 239 頁, 1,800 円
- 吉田憲司 著, 『仮面の森 : アフリカ・チェワ社会における仮面結社,憑霊,邪術』, 講談社, 1992年, 421頁, 3200円
- ***グラフィの誕生 : 近代の***的セクシュアリティ
- 「名付けること」と「娶ること」 : ケニア・アバクリアの「死者」をめぐる災因論の一側面