村落社会における象徴闘争 : 南ラオス・ンゲの村の「キー・カポ」占いから
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概要
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南ラオスは伝統的にモン・クメール系の民族集団が多く住んでいた地域である。また、フランス植民地時代以前から今日に至るまで山地・高原の村々の移動が極めて激しい地域でもある。そして、移動によって街道沿いに降りてきた人々は低地ラオらとの接触が密になることから大きな社会的・文化的変化を起こしている。本稿では、モン・クメール系集団の一つ、ンゲの人々が低地に移動して作った村で行った現地調査をもとに、そこで頻繁に行われている「キー・カポ」と呼ばれる占いの場面を分析する。そしてこの占いのプロセスにおいて村落内で日常的に語られている評判や社会的認知が表出すること、それをもとに村人たちが共同で解釈を構成することを明らかにする。その上でこの占いが平等主義的な社会内部での象徴闘争が繰り広げられている場であることを示す。最後に、1980年代後半以降、経済開放政策をとっているラオスという国家の中で、急激な社会・経済変化に巻き込まれ、過渡期にある小規模社会における象徴闘争について考察する。
- 日本文化人類学会の論文
- 2002-06-30