周縁における権力とエスニシティタイーマレーシア国境のサムサム
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概要
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「サムサム(Sam Sam)」と呼ばれる人々はマレー半島中部, 現在のタイとマレーシアの国境地帯の西海岸に居住している「タイ語を話すムスリム」である。サムサムはタイとマレーの伝統的国家の権力の中心からの周縁に位置し, エスニシティ規定においてはタイ語を話す仏教徒であるタイ人とマレー語を話すムスリムであるマレー人の境界領域にある。本論においては, まず19世紀以降の記録に見られる外からのサムサム像と, 現在のサムサム社会の中で語られる内からのサムサム像を対置して検討することにより, 「サムサム」が自己規定ではなくマレー語を話すムスリムによる他者規定であったことを明らかにしたい。さらに周縁において発生したサムサムの支配者についての現地での語りを分析することにより, 周縁における権力の様態と周縁的エスニシティの創出と変容の過程について考察する。
- 日本文化人類学会の論文
- 1992-12-30