未受精胚珠培養により示されたニラのアポミクシス性
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概要
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四倍性種であるニラ(2n=32)の未受精胚珠由来の植物体を,蕾培養・胚珠培養・胚培養の3段階からなる培養法により得た.いずれの培養もB5を基本培地とし,植物生長調節物質は全く添加しなかった.'蕾培養で培地のショ糖濃度について検討したところ,6%区で蕾中の胚珠の生長が最も良かった(表2).そこで胚珠培養においてもショ糖濃度を6%とした.胚珠培養の他に雌ずい全体や心皮(縫合線に沿って3分割した子房)も培養して比較したが,胚形成卒は胚珠培養で最も高かった(表3).蕾培養に続く胚珠培養で得られた胚を,ショ糖2%のB5培地での月下培養に移した.この3段階培養法によつ品種フラワーボール及び系統MS-6のそれぞれ508個及び400個の未受精胚珠から27個及び107個の植物体を得た.これら合計134個体のうち132個体は四倍体であった.残っ2個体のうちフラワーボールに由来する1個体は2n=17の異数件の二倍性半数体であり,MS-6に由来する1個体は2n=16の正二倍性半数体であった. 一貫してホルモンフリーの培地を用いたことやカルス形成が全く認められ'なかったことから,このように高頻度で四倍性植物体が得られたことの原因を培養中の自然倍加に帰することは難しい.ニラに近縁のAllium odorumにおいては,ほとんどの胚嚢が非減数性であり,かつ卵細胞及び反足細胞が未受精のままin vivo。で胚発生を始めることが報告されている(MODILEWSKI1930,HAKANSSON and LEVAN1957).ニラでも胚嚢母細胞の分裂像の観察から非減数性胚嚢の存在が示唆されている(G0HIL and KA0L1981).従って本研究の結果も非減数性胚嚢がかなりの頻度で形成されていることを示唆するものと考えられ,ニラがA.odorumと同様にアポミクシスを行うことを推測させるものである.一方,低頻度ではあるが二倍性半数休が得られたことは正常な減数性の胚嚢も形成されることを示している. 本研究で示された未受精胚珠の3段階培養法はニラのアポミクシスを研究する上で有効な手段となるものと期待される.
- 日本育種学会の論文
- 1989-12-01