長期的高濃度炭酸ガス環境下におけるウンシュウミカンの光合成, リブロース 1, 5-ビスフォスフェートカルボキシラーゼ活性に及ぼす着果の影響
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概要
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長期的高濃度炭酸ガス条件下に置かれたウンシュウミカンにおける光合成速度, リブロース1, 5-ビスフォスフェートカルボキシラーゼ(RuBPCO)活性ならびに葉中のクロロフィルおよび炭素量の推移とこれらに及ぼす着果の有無の影響を検討した.約1, 000μl CO_2・liter^<-1>の高濃度炭酸ガス条件下では, 光合成速度は通常濃度下での約2倍にまで急激に上昇し, 2週間程度その値が保たれたが, その後しだいに低下する傾向がみられた.RuBPCO活性も一時的に上昇したが低下する傾向が認められ, 光合成速度低下の一因はRuBPCO活性の低下によるものと考えられた.着果樹と無着果樹を比較すると, 着果樹における高濃度炭酸ガス処理後の光合成速度の低下は抑制される傾向にあったが, 両処理樹のRuBPCO活性には差異が認められなかった.このことは, 着果樹において合成された炭素化合物の葉から果実への迅速な転流が重要であること, すなわち, 葉での光合成産物の蓄積が抑制されることで光合成速度がより高く保持されたものと考えられた.このように, ウンシュウミカンにおいても高濃度炭酸ガス条件下で得られた高い光合成速度を維持するためには, 迅速な光合成産物の転流を促す十分なシンクの存在が重要であることが示唆された.
- 園芸学会の論文
- 2002-05-15