スイートオレンジを種子親とした二倍体×四倍体における四倍体の出現
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概要
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カソキツ類では、二倍体(2n=18)を種子親とし、四倍体(2n=36)を花粉親とした場合、非還元性の雌性配偶子と還元性の雄性配偶子との愛精により四倍体が形成され、これが倍数性育種を進める上で重要な育種素材となっている。従来このような四倍体の出現は単胚性品種を種子親に用いた組合せに限られていた。本報告では、多胚性のスイートオレンジを種子親とした二倍体×四倍体において雑種起源の四倍体が作出可能であるか否かを検討した。二倍体スイートオレンジ4品種と四倍体4品種との間で交配を行い、成熟時に種子数調査を行った後、完全種子より取り出した胚を28〜30℃のインキュベータ内に置いたシャーレ内の湿ったろ紙上で発根させた。発根し始めたものについては、伸長中の直根の根端で染色体数を調べた。種子の形成程度は種子親によって異なっており、完全種子の平均出現率が"Mediterranean Sweet"および"広東オレンジ"でそれぞれ55.6%と32.5%、一方"Joppa"および"福原オレンジ"ではそれぞれ14.0%と13.1%であった(Table 1)。発芽した胚は"Mediterranean Sweet"および"広東オレンジ"を種子親とした組合せでは二倍体かあるいは四倍体のいずれかであったが、"Joppa"および"福原オレンジ"を種子親とした組合せではすべて二倍体であった。完全種子全体に占める四倍性の胚を含む種子の割合は花粉親の違いによる差異が極めて小さく、"Mediterranean Sweet"で平均80.5%、"広東オレンジ"では67.6%であった。四倍性の胚を含む種子にはさらに発芽力のある二倍性の胚が"Mediterranean Sweet"で平均57.1%、"広東オレンジ"では67.6%の割合で含まれていた(Table 2)。四倍性の胚が観察された品種では、非還元性の雌性配偶子に由来する三倍性の小粒種子が二倍体同士の組合せで出現している(Table 3)。このことから、四倍性の胚の発生には非還元性の雌性配偶子が関与しているものと考えられた。以上、本研究での結果は雑種起源の四倍体が多胚性品種を種子親とした二倍体×四倍体においても作り出せることを示した。
- 日本育種学会の論文
- 1988-06-01