大麦の麦芽品質に関する遺伝学的分析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
麦芽品質の遺伝様式は農業特性や耐病性に比較すると,余り理解されておらず,品質改善の遅延の遠因でもあった。本実験では確立された少量サンプルの麦芽品質評価法を用いて,統計遺伝学的にビール大麦の麦芽品質に関与する遺伝成分の推定を試みた。 トップ交配検定法により2つの検定品種を別の12品種に交配し,得られた48(正逆交雑を含む)の後代F_1・F_2集団を研究材料とした。調査項目は整粒歩合,千粒重,全窒素,沈降時閉,グルコース含量,沈降時間指数,製表ロス,ろ過速度,冷水抽出エキス,熱水抽出ニギス,修正エキス,可溶性窒素,タンパク溶解度の13項目である。 F_1の沈降時間指数を除く全項目で,正逆交雑間の差は見られたかったことから,交配に際しどちらを雌あるいは雄にするかは任意である,といえる。沈降時間と沈降時間指数の2項目は主に相加的遺伝効果に支配されている。また若干の上位性効果あるいは優性遺伝効果も関与していると考えられるが,それらは小さく,その発現は世代によって異なっていた。従って,遺伝子型対環境交互作用の存在カミ示唆された。 他の11項目では,その殆んどに両親間および後代間の有意差が認められたが,遺伝成分に関しては顕著な結果は得られなかった。 本給果に関する限り,麦芽品質の向上には克服シ難い遺伝的障壁は無い,と示唆された。
- 日本育種学会の論文
- 1983-09-01