パーオキシダーゼアイソザイムによるクワ品種の類縁関係の推定
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概要
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クワ240品種について薄層ゲル等電点焦点法によって,pH5.0〜7.Oの範囲の葉身パーオキシダーゼアイソザイムを分析した。この際,供試材料には葉齢,樹齢たらびに栽植地に違いがあった。しかし,別の実験から本実験の範囲では,これらの違いは同一品種のパーオキシダーゼアイソザイムパターンに顕著な差異をもたらさないことが明らかになった。従って,この分析で検出されたアイソザイムパターンは品種特有のものであるとみなしてさしつかえないものと考えられる。240品種について分析した結果,10種類のアイソザイムバンドが検出された。このうち陽極側に見出される6種類のアイソザイムバンド,すなわちA-4,A-5,A-6,A-7,A-8およびA-9の出現状況に着目して,供試品種を肉眼的にI型,II型,III型,IV型およびV型のアイソザイムパターン群に大別することができた。I型には全品種の38%,II型には46%,III型には13%が属したが,IV型およびV型を示す品種は極めて少なく,それぞれ2%および1%であった。供試品種の類縁関係については,6本のアイソザイムバンド,すなわちA-1,A-5,A-6,A-7,A-8およびA-9の濃度測定値を用いて主成分分析法によって推定した。第1主成分と第2主成分には全情報量の59%が含まれるに過ぎなかったが,両主成分のスコアの散布図から,同一型の品種は比較的近縁な関係にあること,I型とII型,ならびにII型とIII型に属する品種の類縁性が高いこと,さらにIV型およびV型を示す品種は他の品種と比較的遠縁な関係にあることが推測された。たお,供試品種の多くは,主として形態的な特出こよってクワ属の3種,すなわちヤマグワ(Morus bommbycis KOIDZ.),カラヤマグワ(M.alba L.),およびロソウ(M.latifolia POIRET)に分類されているが,本実験の範囲内では,パーオキシダーゼアイソザイムパターンの5型と上記3種との関係は明らかではなかった。
- 日本育種学会の論文
- 1977-12-01