混植による稲の品種間相互作用
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概要
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草型の異なるインド型稲7品種を用い,品種間の混植相互作用を明らかにするために各品種の単植区と2品種ずつすべての可能な組合せの混植区を設けて実験を行なった。 大都分の研究者は競争力を,ある品種が他の品種と混植されたときに示す形質量の増減として定義した。しかし,JACQUARらはそれを抵抗力(α)と侵略力(β)とに分けて解析した。 本研究では混植された2つの遺伝子型の形質変化を総合的にとらえ,それらの間の相互作用を明らかにするために,JACQUADらのモデルを基にし,競争効果および協同効果を表わす新たなモデルを提案した。 得られたデータを7×7のダイアレル表にまとめ,上述したモデルに基づいて各品種の抵抗力,侵略力,競争効果,協同効果を求めた。さらに,分散分析,優位行列による優占力,回帰分析を試みた。 その結果,次のことが明らかになった。抵抗力と侵略力とは互いに相関しており,TKM6,BPI,TN1は抵抗力,侵略力ともに強く,DawnおよびSML Awiniは弱かった。穂重に関して,SigadisおよびIR20は抵抗力,侵略力ともに負を示し,これらの品種は他の品種と混植されると自分も相手も単植より減少する傾向を示した。TKM6,TN1,BPIは正の競争効果を示したが,協同効果はBPI以外の品種では負の値を示す場合が多かった。抵抗力,侵略力の強い上述3品種のうち,TN1は白葉枯病にBPIはTungro病に著しく弱い品種である。これら2品種は混植で単植より被害が軽かった。このことは耐病性多系品種の育成,利用が有効な手段と改ることを示唆している。 ダイアレル表にまとめたデータを分散分析したところ、一種重を除く調査全形質で侵略力,競争効果に有意な品種間差を認めた。また,穂重,わら重に特定競争効果が認められた。すなわち競争効果は混植相手によって変化することを意味している。優占力は抵抗力および競争効果と有意な相関を示し,形質間で互いに相関していた。種々の品種と混植されたときに示す各品種の形質の安定性は品種により,形質により異なった。また,この安定性と抵抗力および競争効果との間には一定の関係を認めることができなかった。
- 日本育種学会の論文
- 1975-08-30