作物品種の多収性の生育解析的研究 : I.個体当り葉面積および葉面積植物体重比率
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概要
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稲6,廿藷1O,大豆12品種その他を材料として,葉面積展開能力についての品種間差異と品種の多収性との関係を研究した。(1)少肥条件下で多収をあげる品種は葉面積増大の方向に強く選抜されて来ているが,多肥条件下,特に多肥密植の下で多収をあげる品種の葉面積展開力はそれ程大でない。(2)葉面積展開力の強い品種が多肥条件下,特に相当程度の密植を伴う多肥条件下で必ずしも多収をあげ得ない原因は,一つにはこの様な条件下では葉面積が増大しても葉と葉との重なり合いが強化されるばかりで必ずしも全乾物収量が増えないことである。第二の原因は葉面積展開力が大であることが"移転率"の低いことと密接に結びついているためである。(3)葉面積植物体重比率(略称一葉面積比率)を決定している遺伝的要因が強く葉面積展開力の品種間差異を支配している。菓面積比率が大であると相対生長率が大となり,ひいて生育期間中の植物体重が増大する傾向である。葉面積比率そのものと植物体重との積であるところの葉面積はこの場合当然大となるわけである。(4)"移転率"の問題も含めて,品種の葉面積展開力と品種の多収性との関係を完全に解くための鍵の一つは葉面積植物体重比率を更にその構成諸要素に分解して行くことにより得られるであろう。(5)この場合,次の諸点に注意しなくてはならない。(a)多肥密植栽培の生育後期に於ては葉面積比率の増大が相対生長率の増大とならない。(b)稲では葉面積比率と植物体重との間に顕著な逆相関が見られる。而して"その植物体重の割に葉面積比率の大なる品種"が高い相対生長率を示すのである。(c)少くとも甘藷と稲の半矮性種では葉面積比率以外の要因が相当強く相対生長率,ひいて葉面積展開力に関係している。
- 日本育種学会の論文
- 1959-09-30
著者
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