由来の異なる六倍体もち性コムギの対立性検定
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概要
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六倍体のコムギでもち性のものはこれまで存在しなかったが,最近日本で相次いで作出に成功した。それらのもち性は作出由来が異なり,谷系H1881と谷系H1884は西海168号と谷系A6099の交配組合せ,盛系C-D1478と盛系C-D1479は関東107号と白火の交配組合せから生じ,K107Wx1とK107Wx2は関東107号にメタンスルホン酸エチルを処理した人為突然変異によって生じた。作出されたもち性系統はいずれもWx蛋白質を欠失しているが,それぞれのもち性遺伝子が同じ遺伝子座にあるのか異なる遺伝子座にあるのかは不明である。そこでもち性とうるち性間およびもち性系統間で交配を行い,花粉分析による対立性検定を行った。まず,もち性コムギ(谷系H1881)とうるち性コムギ(農林61号:Wx蛋白質3個もち通常のアミロース含量;関東107号:Wx蛋白質1個もち低アミロース含量)の間で交配を行い,F_1個体の花粉をヨウ素ヨウ化カリウム溶液で染色してもち・うるち性の判定を行った結果,花粉の分離比がWx蛋白質の数から推定される期待値(7:1及び1:1)に適合することが確認された(Table 1)。次に谷系H1881と谷系H1884を由来の異なるもち性系統(盛系C-D1478,盛系C-D1479,K107Wx1,K107Wx2)と交配し,F_1個体の花粉を集めて同様な分析を行った結果,すべての組合せでもち性花粉のみが観察された(Table 2)。したがってこれらの系統のもち性遺伝子は同じ遺伝子座に座乗する対立遺伝子であると推察された。しかしながら,これらの対立遺伝子における遺伝子内の構造的な差異については明らかではない。
- 日本育種学会の論文
- 1998-03-01
著者
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