六倍体コムギの半数体作出に利用するトウモロコシ花粉の貯蔵
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概要
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属間交雑を利用する六倍体コムギの半数体作山に貯蔵したトウモロコシ花粉が有効か否かを明らかにするため,乾燥・凍結後のトウモロコシ花粉の絹糸上での発芽率およびコムギ品種農林61号との交雑における胚形成の頻度を調べた.乾燥1時間により水分含量が59.O%(新鮮花粉),37.5%,23.1%,9.5%,5.1%および5.O%と異なるトウモロコシ花粉の発芽率をみると,乾燥2時間で花粉の水分含量は9.5%にまで低下するが,新鮮花粉に匹敵する発芽率を維持した.しかし,乾燥4時間以降では花粉の水分含量は5.1%以下になり発芽はほとんどみられなかった.これらの花粉を液体窒素で凍結後温度-80℃で4週間貯蔵した場合には,水分含量が23.1%および9.5%の花粉のみが発芽し,それらの発芽率はそれぞれ6.6%および22.1%であった.したがって,乾燥によって水分含量をほぼ10%から20%までに減少させたトウモロコシ花粉は凍結貯蔵後も発芽することができた.さらに,乾燥により水分含量を21.8%,15.9%,12.7%および1O.3%にして-80Cで13週間貯蔵したトウモロコシ花粉をコムギに授粉した結果,水分含量が12.7%および1O.3%の花粉を用いた場合は水分含量が21.8%および15.9%の花松を用いた場合よりも高い頻度で胚が形成された.それらの頻度はそれぞれ9.6%および8.6%であって,新鮮花粉を用いた場合の約半分であった.これらの胚を無菌培養して再生させた植物体はコムギの平数体であることを確認した.以上から,乾燥・凍結して貯蔵したトウモロコシ花粉をコムギの半数体作出に利用することは可能であることが明らかになった.
- 日本育種学会の論文
- 1994-12-01
著者
-
稲垣 正典
国際トウモロコシ・コムギ改良センター
-
Mujeeb-Kazi Abdul
国際トウモロコシ・コムギ改良センター
-
Mujeeb‐kazi A
International Maize And Wheat Improvement Center (cimmyt) Mexico Mex
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