夏のアジアモンスーンに対するCO_2倍増の影響 : モデルに依存する応答と依存しない応答
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概要
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夏のアジアモンスーンに対する人為的要因による気候変化の影響を、海面水温と海氷のアノマリを境界条件として与えたいくつかのタイムスライス実験によって調べた。実験は4つの異なった大気大循環モデル(GCM)を用いて行われた。各モデルで陸面過程の取り扱いを変えた2対の実験を実施した。目的は、モデルで再現された気候変化がモデルに依存しない確実なものであるかということと、陸面過程の取り扱いにどれだけ敏感であるかということを調べることである。実験ではすべて同一の海面水温アノマリを与えたにもかかわらず、4つのモデルのモンスーンに関する地域スケールの応答は異なっている。全てのモデルで、CO_2の増加によってアジア大陸の昇温がインド洋の昇温よりも大きくなっているが、このことはモンスーンの応答を予測するよい指標になっていない。モンスーン循環の強さはどのモデルでも弱くなっているのが、降水量の変化はモデル間の差が大きい。このことはモンスーンの降水量の変化が、大規模な力学場の変化だけで決まらないことを示している。暖かい気候では、大気中の水蒸気量が多くなるために、モンスーン循環の弱まりにもかかわらず降水量が増加することが可能である。今後数十年のモンスーン降水量変化を理解する上で、海陸の温度傾度の増加よりも、大気中の水蒸気量の増加の方がより重要であると考えられる。陸面の水文過程の取り扱いは、モデルによる応答の違いの主要な原因ではないが、CO_2増加に対するモンスーンの地域的応答には少なからぬ影響を及ぼす。蒸発散のわずかな変化が、大きな降水の変化を引き起こす。簡単な地域水収支解析の結果によると、このような敏感さは、水蒸気の水平輸送の変化だけでなく、降水効率の変化にも関係している。降水効率は、土壌水分量に依存するので、モデル陸面水文過程の取り扱いに敏感である。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 2000-08-25
著者
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Douville H.
フランス気象局気象研究所
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Stephenson D
レディング大学
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Royer J‐f
フランス気象局気象研究所
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Royer J-F.
フランス気象局気象研究所
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Polcher J.
フランス国立科学研究センター気象力学研究所
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Cox P.
イギリス気象局ハードレーセンター
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Gedney N.
イギリス気象局ハードレーセンター
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Stephenson D.B.
レディング大学
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Valdes P.J.
レディング大学