単純植生モデル2(SiB2)による土壌水分と地表面水収支のシミュレーション
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概要
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観測ならびに同化データを地表面モデル(SiB2)に外力として与えることにより、グローバルおよび地域スケールでの土壌水分と水収支が算定された。各格子内で計算された流量は河川流出量を計算するためにグローバルな流下モデルの入力として与えられた。算定された土壌水分と水収支の年平均値と季節変化とが、グローバルスケールならびに格子点スケールで利用可能な観測値と比較された。シミュレーションにもローカルな観測にも土壌水分の大きな年々変動があった。主要な河川流域に対する年流出量算定値は観測値と概ね良く一致したものの、多い観測流出量に対してはやや過小推定もあり、少ない観測流出量に対してはいくらかの過大推定もあった。いくつかの河川流域では年平均値の過小評価があったものの、熱帯、中緯度、そして高緯度に特有の河川について河川流量の季節変化は良く再現されていた。熱帯では、土壌水分と地表面水収支の季節変化は降水量の季節変化に支配されている。中高緯度では土壌水分と水収支は気温と降水量の両者の季節変化と、積雪融雪変化の影響を受けている。緯度が上がるに連れて土壌水分の年変化幅は小さくなる。いくつかの格子点について推定した土壌水分の季節変化を観測点の数を変えながら比較した。観測点での観測外力と地表面パラメータにはモデルで利用したものと若干の違いがあるものの、算定された土壌水分はほとんどの観測地点で多年観測値と良く一致している。しかしながら、ほとんどの地点で、季節変化幅は観測値よりも小さく、融雪と土壌乾燥は一ヶ月程度遅く、土壌は夏季に比較的湿潤である。これらの誤差の一部は、外力としてモデルから与えられた気温が非現実的に低く、蒸発を抑制し特に中高緯度で季節進行を遅らせているためであると考えられる。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-03-26
著者
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Randall David.
コロラド州大学大気科学科
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Zhang Changan
コロラド州大学大気科学科
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Dazlich Donald
コロラド州大学大気科学科
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Randall David
コロラド州大学大気科学科