解氷にともなう気候変動 : Bolling/Allerod温暖期及びYounger-Dryas寒冷期を再現する氷期から間氷期への気候遷移のモデル実験
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概要
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気候システムの長期変動特性を調べるために、以前より開発されてきた二次元多海洋全球熱塩循環モデルをエネルギー収支大気モデルに非同期結合させた。当結合モデルはグリーンランド氷床のサミットコアによって明らかにされたDansgaard-Oeschger気候振動のシミュレーションを既に行なったが、今回は最終氷期以降の解氷期間中、一時的な大陸氷床融解水に対する気候システムの応答を調べた。モデルに対しては二つの水循環に関する強制を加えた。一つは珊瑚礁記録に基づいた最終氷期最大期以降の海水準変動に関係する部分で、もう一つは海水準変動とは無関係に現在深層水が生成される北大西洋を囲むように存在した大陸氷床に起因する部分として仮定されるものである。結果として、千年程度のYounger-Dryasに類似の寒冷期以降の海水準変動に伴う融解水の与え方にあまり依存せず、当モデルはYounger-Dryasに類似の寒冷期を再現した。しかし、Younger-Dryasに先立つBolling/Allerod温暖期を当モデルで説明するためには更にバックグラウンド的に北大西洋に海水準変動と関係しない淡水供給を付加する事が必要である事が示された。本研究ではこれら二種類の淡水供給に関する摂動に対する気候の応答の感度も調べている。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1998-12-25