アジアモンスーンのオンセットと突然遷移における対称不安定の役割の可能性
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概要
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乾燥/湿潤(条件付き)対称不安定(SI/CSI)、赤道外非断熱熱強制とアジアモンスーンオンセットの物理的関係を、ゴダード大気研究室大循環モデル(GLA GCM)を用いて調べた。研究の目的は、SI/CSIとモンスーンオンセットの因果関係を解明することと、SI/CSIの条件下での非対称モンスーン熱強制の臨界的な振る舞いを調査すること、の2つである。これらは北方夏季モンスーン基本場でのSI/CSIが、モンスーン突然遷移のもっともらしい説明かも知れないという著者のこれまでの線形不安定解析の結果を補強するものである。 鉛直運動最大軸の赤道から高緯度への急激な子午面移動で示されるモデルでのモンスーン遷移は、東アジアモンスーン(EAM)域では5月16〜20日、南アジアモンスーン(SAM)域では6月1〜5日に生じる。EAMとSAM域上での乾燥(湿潤)SIに要する安定基準は、モデルでのモンスーン遷移に5〜10日先立つ負の乾燥ポテンシャル渦度(DPV)と湿潤ポテンシャル渦度(MPV)の赤道を横切る夏半球への突然移流と、それによるSI/CSI条件のセッティングを示している。DPVとMPVの零線(乾燥/湿潤対称不安定域)の最大の移動はモンスーン遷移に続いて発生する。ポテンシャル渦度収支の簡単な解析によれば、夏半球への下部対流圏の負のPV移流は鉛直方向の非断熱加熱の差が水平方向よりも大きいことによっている。モンスーン遷移前後では非断熱加熱も1〜3K/dayから12〜14K/dayへ急変する。プレモンスーン期の弱い熱源の始まりは主に基本場のSIとCSIに起因し、ある程度大きなスケールの下部(上部)対流圏収束(発散)パターンを作る。下部対流圏の条件付き不安定な熱帯大気は、赤道外の大規模下部(上部)対流圏収束(発散)が存在すると、モンスーン遷移期に多くの潜熱を解放して強い熱源を発達させるCISK状の過程を励起するのに役立っている。モデルの子午面循環は、非断熱強制がモンスーン遷移期に5K/dayのしきい値を超えるときに始まる。モデルの遷移はEAM域でSAM域よりも明白である。理想化した非対称熱強制の位置と大きさの変化に対する帯状対称大気の線形定常状態での力学レスポンスは、最も強い子午面循環(鉛直運動の最大効率)は熱強制が10N付近にあるときに生じることを示す。DPV/MPVのゼロ線の位置、下部対流圏の最大収束と夏半球におけるモンスーン循環の最大鉛直風の関係は、帯状モンスーン流のSI(CSI)がモンスーン遷移オンセットの原因であることを明白に示唆している。
- 1998-06-25