大気循環レジームと中国の降水量偏差
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概要
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5日平均500hPaジオポテンシャル高度(Z500)と海面気圧(SLP)にみられる北半球の大気循環アノマリーと、アジアモンスーンの影響が卓越する中国東部の(季節変化を除去した)5日平均降水量(R5)の関係を正準相関解析(CCA)を用いて統計的に調べた。また、同時相関から36半旬までのラグ相関も考慮した。対流圏中層のアノマリーに対する降水量の応答を説明するCCAモードを抽出した結果、第8モードまで99.99%の有意水準を満たした。SLP-R5の関係では、第7モードまで同じ有意水準を満たしていることがわかった。これらのCCAパターンの多くは、中国の主なレインストームの発生に寄与する大規模場の特徴と一致している。これらの統計的に有意なCCAパターンの特徴は、物理的解釈において矛盾していない。また、総観場との関係も考察された。特に、Z500-R5関係における4つの主要なCCAモードについて詳細に考察し、検証のために合成図解析も行った。また、Z500-R5あるいはSLP-R5関係において、3半旬までのラグを考慮したCCAモードが有意水準を満たしていた。これらは中国における特定のレインストームとそれに先行する大気循環モードとの関係を説明している。興味深いことに、異なったタイムラグでのいくつかのCCAモードは、全く同じか、非常に類似した降水量分布を示している。これは、対応する降水量パターンを生み出している大気循環レジームの持続性を意味する。それゆえ、これらのパターンはアジアモンスーンや中国の降水量の長期予報に対してきわめて重要である。さらには、異なったタイムラグでSLPのいくつかのCCAパターンが、降水量分布ならびに特定の対流圏中層の循環レジームと有意な関係があることを強調したい。これらは、特徴的な降水量分布をもたらす大気循環システムの鉛直構造を示している。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1994-12-25