熱帯西太平洋におけるスーパー・クラウド・クラスタ-の組織化に伴う大規模場の力学
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概要
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熱帯大気の非線形プリミティブ方程式系モデルを用いて、熱帯西太平洋におけるスーパー・クラウド・クラスター(SCC)の組織化に伴う大規模場の力学、及びSCCの成長とマデン・ジュリアン振動(MJO)に対する平均流との非線形相互作用並びに中緯度からの励起効果を調べた。積雲対流活動とSCCの組織化に伴う大規模循環との非線形相互作用は、種々の対称発散運動を赤道に沿って励起し、回転運動を赤道から離れた緯度で励起することが分かった。前者は、東進する湿潤ケルビン波と西進する慣性重力波として同定でき、後者はロスビー波として同定出来る。SCCと、北半球冬季の熱源分布による基本流との相互作用は、混合ロスビー重力波とみなし得るような西太平洋における準定常モードを励起する。西太平洋における西風の垂直シアーはMJOの垂直軸の傾きを変化させ、その成長に好ましい状況をもたらす。北半球冬季においては、東アジア大陸からの寒気の吹き出しが、海洋大陸と西太平洋との間の気圧差の形成により地表風の収束をもたらし、赤道域におけるSCCの成長に強い影響を及ぼす。既に存在するSCC/MJOに伴う下降流の影響が弱まった時、寒気の吹き出しによる気圧変化が、新たなSCCの成長を中間規模の時間スケールでもたらす。この中間規模のSCC生成の時間間隔は、約8-10日であり、MJOが西太平洋の温水域を通過する時間とほぼ符号する。北半球夏季において、赤道域におけるSCCは東進と西進の混在したシグナルを示し、組織化は顕著でない。北半球亜熱帯(北緯15-20度)において、西進する総観規模の波動は、強い西風シアーの領域で見いだされる。これらの波動は潜熱による加熱、並びに下部対流圏での平灼西風の垂直シアーからのエネルギーにより成長する。全体的にみて、これらの結果はSCCの組織化及び配置、並びに随伴する多重スケールの運動が、季節平均流の変動に強く依存していることを示している。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1994-08-25
著者
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Lau K.-M.
NASA GSFC
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Lau K.-m.
Nasa
-
Wu H.-t.
ゴダード宇宙飛行センター大気研究室
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Lau K.M.
NASA
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Wu H.T.
ゴダード宇宙飛行センター大気研究室
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