香港周辺の華南における夏のモンスーン開始に関する解析的研究
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概要
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本論文では, 香港における降水量データによって, 華南における夏のモンスーン開始期を定義し, その物理過程を検討した. 使用したデータは, 1)平均海面気圧, 2)地上および高層風, 3)地上および850hPa の気温, 4)黒体温度(T_<bb>) の4つの気象要素である. 1)から3)はヨーロッパ中期予報センターの格子点データ, 4)は静止気象衛星ひまわり4号のデータで, 対象期間は1985-90年である. これらの各気象要素の日別値を, 対象とした6年間各年における, 夏のモンスーン開始日の前後10日間でコンポジットをとって解析した. コンポジット解析の結果, 以下のプロセスが明かになった. 開始日の10日前に, 華南とオーストラリア北部との気温差が, 後者の地域での気温の低下によって大きくなる. 時間の経過とともにこの気温差は, 華南および南シナ海域での気温上昇により, さらに大きくなる. 開始日の4日前には, 北緯18度・東経107度付近のトンキン湾に, 地上低気圧ができる. この地上低気圧は, 開始期全体を通じて強まっていく. 以上の気温傾度の増大および低気圧の強化にともなって, それまで東経60-80度にみられた越赤道気流が東ヘ移動する. また, 東経90-110度における越赤道気流の別の分枝によって, 南シナ海での下層の南風が強化される. その結果, 東経100-120度・北緯15-25度付近での下層の収束が増大して, 上昇気流が強まる. これは200 hPaの高気圧が, 開始日に拡大することでも確認される. この高気圧の東のヘリでの北風は赤道に向かう強い反流となる. モンスーントラフは, 南シナ海にこうして形成され, 黒体放射温度(T_<bb>)で示される対流活動が活発になる. これが華南の夏のモンスーン開始である.
- 1997-02-25
著者
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Chan Johnny
Department Of Physics And Materials Science City University Of Hong Kong
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So C.h.
Department Of Physics And Materials Science City University Of Hong Kong
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