中国北西部・乾燥地域における降雨 : HEIFE期間における解析
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概要
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中国北西部の乾燥地域に位置するHEIFE領域の降水の特性について調べた。HEIFE領域の降雨は総観規模の擾乱によって引き起こされ、このため約200×100 kmのHEIFE領域において降水はほぼ同時に観測される。しかし、観測される降雨量は標高に大きく依存し、Qilian山脈中腹の標高3000 mの地点では600 mm/year以上の降雨が観測される一方、標高の低い河西回廊と呼ばれる谷間の底部では100 mm/year以下の降雨しか観測されない。大気中の水蒸気密度の鉛直プロファイルを調べてみると、夏の間には乾燥地域とはいえ少なからぬ量の水蒸気が観測され、また、安定度の点でも大きな条件付き不安定を示すことがわかった。しかし、持ち上げ凝結高度(LCL)および自由対流高度(LFC)がともに高いので、高い地表面温度によって大気が不安定化されるにもかかわらず局地的な積雲対流は見られず、結局極前線上の波動擾乱がやってきたときにだけ降水が見られる。しかし、この時多くの雨粒は地表に届く前に深くて乾燥した砂漠上の境界層内で蒸発してしまうものと思われる。このため、領域内の標高の低い地域で観測される降水量は著しく減少する。一方、冬の間は水蒸気量・安定度の両方の点において降水があまり期待できない。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1997-08-25