チトクロームP450の遺伝子多型と発癌感受性について : CYP1B1を中心として
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概要
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TCDDにより誘導されるチトクロームP450分子種の一つとして同定されたCYP1B1はベンゾピレン等の多環芳香族炭化水素, およびアリルアミン等の環境中に存在する化学発癌物質を代謝活性化することから, これらの化学物質の発癌性に極めて重要な働きをすると考えられている。また内在性の基質としてエストロゲンを代謝するCYP1B1は17β-estradiolの4位水酸化能を有する酵素の中で一番強い活性を示すことから, エストロゲン関連臓器における発癌に深く関連すると報告されている。これらCYP1B1が示す酵素活性の特性から, ヒトCYP1B1遺伝子上に存在する複数の多型と, 乳癌および肺癌発症との相関性を検討した結果, 119番目のアミノ酸残基のAla-Ser多型が乳癌と肺扁平上皮癌において統計学的に有意に関連性のあることが明らかとなった。多型組合せによる異なるアミノ酸をもつCYP1B1をNADPH-P450 reductaseと共に大腸菌に発現させて酵素活性を測定し, 多型による影響を分子生物学的に比較検討した結果, Ala-119とLeu-432を同時にもつCYP1B1は17β-estradiolの4位水酸化活性能が一番低く, 乳癌感受性が統計学的に有意に低いことが判明した。これらのことはCYP1B1酵素の基質認識部位に存在するAla-Ser多型により基質認識に変化が生じ, 発癌感受性の個人差を生じた可能性を示唆している。
- 日本毒性学会の論文
- 2000-10-31
著者
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