免疫部門
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概要
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大国寿士前教授の後任として, 2001年6月より田中信之が赴任した。6月から研究技術員の浅野由ミが, 7月から助手の佐藤(織田)恵理博士とポスドクの大塚秀文博士が, 8月から研究技術員の上原郁野が, 11月から助手の飛梅圭博士がそれぞれ就任して, 本年度はこのメンバーで研究を開始した。研究室には何も無い状態であったが, 実験機械, 試薬, 器具等の研究に必要な全てのものを買いそろえて, なんとか夏頃には研究を開始することが出来るようになり, 新たな研究プロジェクトを立ち上げつつある。これまでに, 田中はがん抑制因子の機能解析及び遺伝子発現の制御機構を中心に研究を行なってきた。平成元年より大阪大学細胞工学センター, 平成7年より奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科, 平成9年より東京大学医学部免疫学教室に所属し, 転写制御因子であるIRF-1が癌抑制因子として機能し, p53と共に癌遺伝子である活性化型H-rasによるアポトーシスの誘導の制御を行なっていること, IRF-1とp53が協調してCDK抑制因子p21の転写を制御して細胞周期を調節している事などを報告してきた(Cell, vol.77,829-839,1994; Nature, vol.382,816-818,1996)。更に, 遺伝子欠損マウスの解析から, IRF-1が古典的な癌抑制因子の概念とは異なる高癌感受性遺伝子(tumor susceptibility gene)であることを明らかにした(Genes Dev., vol.13,pp1240-1245,1999)。これらの研究を通して, 癌抑制因子であるp53とIRF-1が癌遺伝子によるアポトーシスの誘導を制御していること, 癌抑制因子の新たな相互作用, 遺伝子欠損マウスを用いた癌抑制因子の機能解析等の分野で先端的な解析を行なってきた。同時に, 昨年度は現助手の織田博士(東京大学大学院医学研究科)と共同してp53によるアポトーシスの実行分子でありBcl-2ファミリー分子に属する新規因子Noxaを同定し発表した(Science, vol.288,pp1053-1058,2000)。また, 助手の飛梅博士は癌研究所生化学部及び東京医科歯科大学を通じてアポトーシスを誘導するストレス応答性キナーゼASK1の機能解析, 遺伝子欠損マウスの作成を行なっている(EMBO Rep., vol.2,pp222-228,2001)。これらの実績の基に我々は癌抑制因子p53によるアポトーシスの実行機構の解析を行っている。具体的には, 癌遺伝子の活性化した細胞は様々なストレスを引きがねとしてp53依存的にアポトーシスを起す。この機構は, 癌遺伝子が活性化していわゆる前癌状態となった細胞を選択的にp53が排除することから考えて, p53による癌抑制機構の重要な部分をしめていると考えられる。この機構に関しては, しかしながら, これまで知られている様々なp53標的遺伝子の機能のみでは説明がつかない。このことに関して, 我々は癌遺伝子によるクロマチン構造の変化, タンパクレベルでの制御の変化といった側面から解析を始めている。同時に, ミトコンドリアでのアポトーシス実行分子Bax及びBakのp53による活性化機構の解析, 癌化におけるクロマチン構造の再編と遺伝子発現の変化等の解析を進めており, いくつかの新しい知見を既に得ている。これらの解析を更に推し進めて, 癌抑制因子による癌化の抑制の分子機構を解明していくと共に, それを応用した選択的な癌細胞の排除を目指した治療法の開発につなげていきたいと考えている。本教室は, 研究を始めたばかりであり, 以下の業績は各自(田中, 織田, 飛梅)がそれぞれの所属の教室で本年度発表したものがほとんどであるが, 参考までに記載する。
- 日本医科大学の論文
- 2002-03-25
著者
関連論文
- 『Noxa遺伝子欠損マウスの解析』(平成15(2003)年度公開セミナー : 老研研究発表会(平成15年1月〜12月))
- 免疫部門(研究概要:研究業績)
- がん抑制因子 p53 によるアポトーシス実行機構の解析(平成 13 (2001) 年度公開セミナー(老研研究発表会)
- 免疫部門