水稲分げつ期の根圏環境に対する有機物・水管理の影響(作物根の活力維持と肥培管理技術)
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概要
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本報告は水稲分げつ期の土壌の還元発達と根の活性, 生育収量に及ぼす有機物, 水管理の影響を検討したものであり, 得られた結果を要約すると次のとおりである。1)分げつ期の根圏還境は, 地温上昇と共に酸素の減少とこれに対応したメタンの生成により強い還元状態となったが, 間断かん水により土壌中の酸素が増加し, メタンの減少により還元発達は抑制された。2)施用有機物と土壌の還元化の程度は, 対照区が最も弱く, 次いで堆肥・稲わらの順で, 稲わら区の酸化還元電位は100mv前後になった。3)強還元下の水稲根は, α-ナフチールアミン酸化力が低く, 逆に酸素吸収量が高く, 根は濁褐色(鈍いアメ色)を呈し, 生気を失っていたが, 間断かん水区は逆にα-ナフチールアミン酸化力が高く, 根は白味を帯びた明るい褐色を呈し, 健全であった。4)分げつ期の間断かん水により水稲根は対照の慣行管理に比べて半湿田で減少, 湿田で増加した。有機物の施用により根の分布量は対照より増加した。5)半湿田では分げつ期の間断かん水により初期生育は良くなったが, 土壌のアンモニア態窒素の減少により生育中期に栄養凋落を起し, 有機物の種類に関係なく減収した。湿田では半湿田のようなアンモニア態窒素の減少はなく, 有効茎歩合の向上, 穂数の増加により増収し, 稲わら区でその効果が高かった。
- 日本作物学会の論文
- 1987-03-31