ブラジル産リン酸アルミニウム鉱と炭酸カルシウムとの焼成反応
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概要
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ブラジル産のリン酸アルミニウム鉱を肥料に利用する目的で、これに炭酸カルシウムを加えて焼成し、得られた焼成物を顕微鏡とX線回析でしらべ、リン酸の溶解率を測定した結果は次のように要約される。1)Jandia鉱石中のリン酸がすべてシリコカーノタイトをつくり、鉄・アルミニウムがすべてゲーレナイトをつくるとすると、炭酸カルシウムの添加量はCaO/PO_4モル比を4程度になるようにする必要がある。この混合物を1300℃以上で焼成して徐冷すると、大部分が10~100μmの大きさの結晶のシリコカーノタイト、α-リン酸カルシウムおよびゲーレナイトが生成し、ク溶性リン酸と可溶性リン酸をそれぞれ16.8%、12.3%含むものが得られ、リン酸のク溶率が95%程度、可溶率が70%程度に増大した。焼成物を急冷する場合は、ク溶率が85%程度、可溶率が45%程度に著しく低下した。2)1300℃以下で焼成する場合はシリコカーノタイトの生成量が減少した。すなわち、1200℃で焼成する場合は主としてβ-リン酸カルシウムとゲーレナイトが生成し、1250℃では主としてα-リン酸カルシウムとゲーレナイトおよび少量のシリコカーノタイトが生成し、いずれの場合も反応が十分に進行せず、リン酸のク溶率も可溶率も1300℃の焼成物にくらべて低い。1300℃で焼成する場合でも、CaO/PO_4モル比が4よりも小さい場合は反応が十分に進行しないのでこれらの溶解率が低くなる。CaO/PO_4比が4よりも大きい場合は、一部にアパタイトが生成するので溶解率が減少した。3)比較のために、試薬を用いて合成したリン酸アルミニウムと炭酸カルシウムの混合物を1300℃で焼成する場合は、CaO/PO_4比0.5~1.5でβ-リン酸カルシウムが生成し、CaO/PO_4比1.5~2.0で主としてα-リン酸カルシウムが生成した。これらの反応にともなって酸化アルミニウムカルシウムが生成したが、これは2%クエン酸や中性クエン酸アンモニウム液に溶解するので、リン酸の溶解率の測定の際にコロイド状のリン酸アルミニウムやアパタイトの沈殿が生じ、リン酸のク溶率は最大93%程度で可溶率は45%程度に著しく低下した。4)上記の反応を二酸化ケイ素の存在下で行う場合は、酸化アルミニウムカルシウムの代わりに難溶性のゲーレナイトが生成するので、リン酸のク溶率が増加し、可溶率は顕著に増大した。二酸化ケイ素の添加の効果は、SiO_4/PO_4比0.5のときに最も顕著であり、CaO/PO_4比2.5でそれぞれク溶率がほぼ100%、可溶率が85%程度に増加し、ク溶性リン酸24%程度、可溶性リン酸20%程度を含む焼成物が得られた。二酸化ケイ素の量をこれよりも多くしてSiO_4/PO_4比を1.0にし、これに応じてCaO/PO_4比を3.5にした場合は、シリコカーノタイトとゲーレナイトが生成し、リン酸のク溶率と可溶率がそれぞれ97%程度、70%程度、jandia鉱を用いる場合と同程度に低下した。
- 1988-06-05
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