不定根の早期誘導によるダイズの耐湿性の向上
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
ダイズを水田転作の作物として栽培する際,過湿および湛水に対する耐湿性の向上が求められている。この研究では,ダイズの茎から発生させた不定根が湿害の緩和にどの程度寄与できるかをポット条件で検討した。不定根は慣行的に行われてきた培土によっても誘導されたが,培土後の高土壌水分条件によってさらに多く発生した。ダイズの収量は培土によって対照区に比べ11%増加したが,培土直後10日間の飽和土壌水分処理をすると不定根数が増加し26%も増収した。また,湛水処理時に発生した不定根を処理後の培土により枯死させない場合,湛水処理による収量の低下は大きく軽減された。そこで,不定根の発生程度に差のある4品種を供試し,不定根の早期誘導が各生育期に湛水処理したダイズの生育および収量に及ぼす影響について検討した。第2本葉期に培土直後1日間湛水して不定根の早期誘導処理をした区(誘導区)では,無誘導区(無培土および無誘導処理)より4品種とも栄養成長期(第4本葉期)および生殖成長期(開花盛期)の湛水に対し生育と収量の低下が軽減された。また,不定根の発生が多い品種ほど湿害は顕著に緩和された。以上から,生育初期に不定根を多く確保すると,その後の生育期間中に起こる湿害に対する植物の耐性が向上すると期待された。
- 日本作物学会の論文
- 2003-03-05