馬鈴薯組織培養のカルス形成における体内サイトカイニンの生理的意義について
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概要
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馬鈴薯の塊茎組織を用いた組織培養において, 改良ホワイト培養基にα-ナフタレン酢酸を0.3mg/lの濃度で添加するとカイネチンを加えなくとも良好なカルス形成がみられた. このNAAによるカルス形成は組織を培養基上に移植するまえにあらかじめ十分に水洗し, これを無菌寒天上にのせて2週間前処理をすると, そのごのカルス生育に顕著な低下がみられた, この低下は前処理の寒天中に, あるいは培養中にカイネチン (0.03mg/l) を加えると完全に回復した. この事実は前処理期間に組織に含まれる体内サイトカイニンが消費されたためと考えられる. ついでNAAのみ添加した培養上での培養期間中に, 組織をNAAとカイネチン両者を含む培養基に2週間おきに移植した. その結果カルスの生育に大きな影響を与えた. すなわち塊茎より採収直後の組織のカルス生育はカイネチン添加によつて阻害されるが, その生育の旺盛な期間に当たる培養後2週間目に移植するとほとんど影響はみられなかつた. これに反し生育低下のはじまる4週間目以後に移植すると, カルス生育能は再び活性化した. したがつてカルス生育初期にはNAAによつておこるカルス形成に必要な十分量のサイトカイニンが培養組織中にあるため, カイネチン添加はむしろ過剰濃度による生育阻害としてあらわれる. しかしそのご組織のサイトカイニン活性が減少するため, 2週間目の移植カルスにはほとんど阻害効果はみられなかつた. さらに培養末期におけるカルス生育の低下はカイネチン添加によつて回復することから, あきらかにサイトカイニン不足によるものと解される. 以上のことから馬鈴薯の塊茎組織にはサイトカイニンが含まれ, これがオーキシンのみ添加した培養基上のカルス形成に対して有効に作用しているものと考えられる.
- 1968-12-10
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