試験管内無菌培養法による稲の出穂および稔実
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概要
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試験管内無菌培養法により, 稲の幼穂分化の機作を追求中, 若干の結果を得たので報告する. 用いた材料は, 感温性品種の水稲農林15号である. 培養基は, 無機塩類についてはWhiteの処法を若干変えたものを用い, 炭素源として蔗糖を加えた寒天0.7%のものであつた. 培養に用いた試験管は, 25×350 mmの硬質ガラス管 (アンプル用) であつた. これに, 上記の培養液を約45ml入れ, 1.5kg/cm^2で20分間, 加圧滅菌した後, 滅菌された種子を, 試験管1本に1粒宛, 無菌的に播種した. 播種後, 暗黒下25℃の恒温器内で24時間催芽し, 各温度の下で培養を続けた. なお, 幼穂分化の遅速の判定には, 主稈上の葉数の多少を指標として用い, より多い葉数で幼穂分化した場合は, 幼穂分化は遅れた (阻害された) とした. 1) 水稲農林15号は, 試験管内, 菌培養法によつても十分幼穂分化し, 開花結実しうる. 2) 培養温度が20℃〜30℃の範囲内では, 培養基中に無機養分の外に, 蔗糖が存在すれば (1〜5%), ほとんど全個体, 6葉で出穂開花し, 結実した. 3) 培養温度が15℃以下の場合は, 幼穂分化は阻害され, 特に10℃の幼穂分化への阻害効果は大きかつた. 4) 1穂当りの穎花数は, 培養温度20℃〜30℃の範囲内では, 処理間に余り差はみられなかつたが, 1穂当りの稔実粒数は, 蔗糖1%の温度25℃区において最も多かつた.
- 日本作物学会の論文
- 1964-07-30