ダイズ品種における光合成速度の日中の低下と葉の水分状態との関係
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概要
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ダイズ個葉の光合成速度の日中の低下程度(APdec:午後の値/午前の値)の品種間差に関与する生理的要因を葉の水分状態に着目して解析した. ダイズ10品種を圃場条件で3年間(1990〜1992)栽培し, 葉のみかけの光合成速度(AP), 気孔コンダクタンス(Gs), 水ポテンシャル(Ψw), 浸透ポテンシャル(Ψs), 圧ポテンシャル(Ψp), 相対含水率(RWC)および茎基部からの出液速度(Ex)を午前(9-11h)と午後(13-15h)測定した. APdecはGsの低下程度(Gsdec)と9回の測定中5回品種間で有意な相関がみられた. 供試品種中APdecのもっとも大きい品種(Peking)のΨwは, 飽差(VPD)の大きい条件(1990年)では, APdecのもっとも小さい品種(宗賀在来)を含む2, 3の他の品種に比べて高く維持されたことから, Ψwの差がAPdecやGsdecの品種間差に寄与しているように思われた. 降雨遮断処理条件では, Pekingは宗賀在来に比べ, RWCが低く, Ψsが低下してΨpの低下を少なくする傾向がみられた. しかし1991, 1992年(多雨条件)には, Ψwの低下がほとんどなくてもAPが低下する場合がみられた. ExとAPdecおよびGsdecとの間には, 品種間で正の相関が認められた. これらの結果は, 光合成速度の日中の低下程度の品種間差は, 葉の水分状態や水分吸収能と密接な関係にあるが, それ以外の要因が支配的な場合もあることを示している.
- 日本作物学会の論文
- 1994-12-05