イネの伸長茎部における各葉枕の重力屈性反応と葉枕間の相互作用
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概要
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イネの伸長茎を人為的に横転すると, 通常3個の葉枕の屈曲によって鉛直方向に起きあがるが, 本研究は, それぞれの葉枕間の相互作用の有無を検討したものである. 材料は, 浮稲品種Habiganj Aman 8 (HA) と水稲品種ササニシキを用いた. 両品種とも同一の傾向を示したので本報ではHAの結果について述べる. 第1実験では, インタクト個体と茎切片 (葉枕3個を含む) の重力屈性反応を比較検討した結果, 両者は, ほぼ同様の傾向を示した. 第2実験では茎切片を用いて各葉枕の屈曲の経時変化を調査した. いずれの葉枕も水平配置後1, 2時間内に屈曲を開始し, 42時間後には, ほぼ屈曲を終了した. 第3実験では, 特定の葉枕を屈曲しないように物理的に固定して各葉枕の反応をしらべた. 下位節葉枕を固定した場合は, 下位節葉枕の屈曲減少分を上位節葉枕が屈曲して補うことが認められた. 一方, 上位節葉枕を固定した場合は, 下位節葉枕の屈曲増加は見られなかった. 第4実験では, 各葉枕を単離してから任意の順に並べかえ, 再結合した場合の各葉枕の屈曲反応を調べた. 葉枕間には5mmの隙間を設けた. 反応能力の低下した下位節葉枕を最上位に配置すると, 屈曲角度の総和は100度近くの値を示したが, 若い上位節葉枕を配置したときはほぼ90度となった. 以上の結果から, 各葉枕は化学物質の交換なしに, それぞれの位置を察知して重力に反応することが示唆され, さらに上位節葉枕ほど屈曲角度の総和が90度に近い値となるような正確な調節能力を保持していることが明かとなった.
- 日本作物学会の論文
- 1993-03-05
著者
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