ダイズの根系発達に及ぼす土壌水分の影響

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根系における保守的形質と可塑的形質を区別する試みとして, 播種後38日間, 3つの異なる土壌水分条件に設定された根箱中で, 生育したダイズ品種・奥原1号枝豆の全根系を定量的に調査した. 対照区 (C)は, 週1回最大容水量(42.6%)の水が与えられた. 上層濯水区(S)と下層濯水区(B)の根箱は, 毎週秤後, 減量分に相当する水がS区は表層から, B区は下層から与えられ, 最大容水量の36.2%の水分に維持された. C区の根系は, 根箱全体にほぼ均等に発達した. それとは対照的に, B区の根系発達は, 根箱の上層部に密に, 下層部で疎であった. S区の根系発達は, B区と逆のバターンであった(第1図). どの区でも高次の側根を出す, 長くて, 太い1次側根(L型)を直根基部から発根した. 30cm以上の長さのこれらの側根数を比較すると, B区は14本, S区は12本, C区は5本であった. 植物体軸の下方への延長線とそれらの側根の基部がなす角度(走向角)は, 明らかにC区よリS・B両区で小さかった(第1図). どの区でも, 側根は全根長のみならず全根系表面積の98%以上を占めた. またどの区でも側根の分枝次数は4次までであった. C区では全側根数の約65%をL型1次側根と分枝をしない(S型)2次側根が占めた. S・B両区では, 全側根数の約66%をL型2次側根とS型3次側根が占めた. これらの側根は, 全根長と全根系表面積の拡大に大きく寄与した(第2表). 根径は直根を除き, C区に比べてS・B両区で太くなる傾向を示した(第2表). 土壌水分条件が変わっても, 根粒の70%以上はL型1次側根に着生し, その着生が認められたのは2次側根までであった(第2図). 根粒の着生分布は, C区では根系の全体にわたったが, S区では根系の上半部に, B区で上半部に集中した(第3図). 土壌水分変動の測定結果(第3表) とS・B両区の根系像(第1図)から判断して, 側根の分枝能は土壌水分が比較的低くても, 安定している土層で高まると推察された. 根系の諸形質の内, 異なる土壌水分条件でも変化しなかったものを保守的形質, 変化したものを可塑的形質として, それらを整理すると, 保守的形質は, (1)4次までの分枝能, (2)2次側根までの根粒の着生および, L型1次側根へい集中的着生, 可塑的形質は, (1)長く, 太いL型1次側根数, その長さおよび走向角, (2)側根の根径, (3) 4次分枝の範囲内での分枝能, であった.
日本作物学会の論文
1987-12-05

ダイズの根系発達に及ぼす土壌水分の影響

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