水稲の地上部の形質におよぼす根の役割に関する研究 : 第6報 栽培時期の移動が根と地上部の形質におよぼす影響
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概要
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本研究は韓国の南部に位置している嶺南作物試験場で行なつた. 南部の代表的水稲中・晩生3品種を用いて栽培時期を移動し, 地上部諸形質におよぼす根の生理生態的影響を気象要因と関連せしめ検討したところ次の結果が得られた. 1. 栽培時期の移動により収量生産期(出穂前10日より出穂後30日までの40日間)の気象要因に大きく影響をうけ, 日平均気温24.6℃で最大収量がえられ, これより高・低温になるにしたがつて低下傾向を示し, 両者の間にはつぎのような抛物線を求めることができた. y/s=1.2955-0.0434(t-24.6018)^2 2. 最高分蘖期の茎数の多少は上位根重および上位根の α-ナフチルアミン酸化量と密接な正の相関が認められた. 3. 全根重および根の α-ナフチルアミン酸化量を幼穂形成期・出穂期, および乳熟期に測定した結果, 早植栽培(高温)ではそれらの低下が顕著であり普通期栽培では緩慢であつた. 4. 穂当り籾数の多少は幼穂形成期から出穂期までの根重および根の α-ナフチルアミン酸化量の減少程度と負の相関があり, 第3要素根の太さとは正の相関が認められた. 5. 葉身の枯葉率(枯れ上がり)の多少は幼穂形成期から出穂期までの根重および根の α-ナフチルアミン酸化量の減少程度と正の相関があり, また枯葉率は第3要素根の太さと負の相関が認められた. 6. 幼穂形成期から出穂期までの根重および根の α-ナフチルアミン酸化量の低下程度と収量との関係を見たところ, それらの低下程度が小さい普通栽培で高く, それらの低下程度が大きい早植栽培で低かつた. 以上, 籾数・枯葉率・収量などの地上部形質は特定期間の根の形態および機能と密接な関係があり, 収量生産期間の平均気温が24.6℃の普通期栽培(出穂期8月25〜8月30日)において根の活力は高く維持され, 籾数が多く下葉の枯れ上がりも少なく収量は最大であつた.
- 日本作物学会の論文
- 1972-03-28